不動産・保険・銀行の手続き
遺産分割協議が確定すると、次に必要なのが相続財産(不動産や預貯金、動産等)の名義変更です。期限が定められていませんが、うっかり忘れないようにしましょう。
特に注意が必要なのが不動産の名義変更です。
現金を引き出す必要のある銀行口座や換金する可能性の高い有価証券の名義変更は、多くの方が忘れずに行うと思います。
しかし、不動産を分割せずに被相続人からそのまま引き継ぐ場合には、名義変更しなくても住み続ける・保有し続けることが可能ですので、名義変更の手続きを怠りがちです。名義変更しないうちに引き継いだ相続人に万が一のことがあった場合は、法定相続人が増え、財産の売却や分割を余儀なくされることも多くみられます。
代表的なものは以下の通りです。
不動産の名義変更
相続が発生した場合に被相続人名義の不動産を相続人名義に変える手続きで、相続登記(不動産登記)と言います。
法務局で登記簿を閲覧すれば、誰でもその不動産が誰の所有になっているか、担保などが付いているかどうかを確認できます。
不動産名義を変更しないままでいると、後々トラブルになることがありますので、遺産分割協議が整った段階で安心せず、相続手続きの一環として速やかに行ってください。
不動産の名義変更の手続きの流れ
おおよそ、以下の手順で行います。
- 遺産分割協議の終了
- 登記に必要な書類の収集
- 登記申請書の作成
- 法務局への登記の申請
相続不動産の売却について
相続に関する不動産のご相談で最も多いのが、相続した土地・建物を実際には使わないので売却したいというものです。
その場合、相続した土地・建物を名義変更することなくそのまま売却します。
より良い売却の方法、より良いタイミング、より良い特例の使い方など、ある程度専門家に相談して最低限の情報を把握した上で、実際の売却に進みましょう。
生命保険金の受け取り
生命保険金については、保険契約でその受取人がどのように指定されているのかによって分けて考える必要があります。 以下のケースを参考にしてください。
ケース(1)特定の者が保険金の受取人として指定されているケース
→保険金は受取人自身が自分の権利として取得するので相続財産には含まれません。
ケース(2)保険金の受取人が「相続人」と指定されているケース
→このケースも被相続人が亡くなられた時点の相続人を指定しているのであって、その相続人は相続によってではなく、保険契約によって保険金を受け取ることになります。
従って、このケースでも、生命保険金は相続財産には含まれません。
但し、例外もありますので、一度専門家にご確認ください。
ケース(3)保険金の受取人が亡くなられた方自身とされているケース
→このケースでは保険金は相続財産となります。
以上のとおり、被相続人が生命保険に加入していた場合は「死亡保険金の受取人に指定されている者」が保険会社に保険金を請求することとなります。
また、ケース(1)(2)のように、生命保険の受取人が指定されている死亡保険金は相続財産には含まれませんので、原則として、全額が受取人の財産となります。
預貯金の名義変更
被相続人の名義である預貯金は、遺産分割協議がまとまっていない時点で一部の相続人が預金を勝手に引き出すことが禁止されています。
このため、被相続人の死亡を銀行などの金融機関が確認すると預金の支払いが凍結されます。
凍結された預貯金の払い戻しができるようにするためには、遺産分割協議書を作成する必要があります。
ほとんどのケースは預貯金だけでなく、不動産なども発生することがあるので、財産すべてについてしっかり遺産分割協議書を作成する必要があります。
遺産分割を済ませた後
遺産分割をどのように済ませたかにより、手続きは異なりますので事前にしっかりおさえておきましょう。
1)遺産分割協議に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
- 金融機関所定の払い戻し請求書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 各相続人の現在の戸籍謄本
- 被相続人の預金通帳と届出印
- 遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
尚、以下に、稀ではありますが調停・審判に基づく場合と、遺言書に基づく場合のケースを挙げましたのでご参照下さい。
2)調停・審判に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
以下の書類を金融機関に提出することになります。
3)遺言書に基づく場合
以下の書類を金融機関に提出することになります。
- 遺言書
- 被相続人の除籍謄本(最後の本籍の市区町村役場で取得できます。)
- 遺言によって財産をもらう人の印鑑証明書
- 被相続人の預金通帳と届出印
その他、上記3つの場合全てにおいて、金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますから、直接問い合わせて確認する必要があります。
以上が主な手続の方法ですが、これらの名義変更は煩雑な手続きですので、間違いのないよう一度専門家に相談することを推奨します。